2025年4月の新刊ピックアップ

リュドヴィック スリマック柏書房

かつて地球には、私たちとはまったく異なる人類が生きていた――。赤道直下から北極圏まで駆けまわり、30年にわたり洞窟の地面を掘り続けた、第一人者にして考古学界の異端児による初の一般書。

周防義和DU BOOKS

4度の日本アカデミー賞に輝いた著者による「映画音楽講義」がついに刊行。なぜあのシーンにこの音楽なのか? プロの考える 「劇中音楽」 の作曲術、演出効果を学び、映画に隠された「音の設計図」を鑑賞する。

中野 京子NHK出版

昆虫学という学問が存在しないなか独学で研究を行い、小さな虫の中に「神」を見た女性、マリア・シビラ・メーリアンとは何者だったのか──。科学と芸術が混じり合った豊かな時代の輝かしい偉業を、中野京子が生き生きと蘇らせる。

デヴィッド・グレーバー岩波書店

近代知の起源とされる「啓蒙思想」は、ヨーロッパ貴族のサロンではなく、じつはマダガスカルの海賊と女性たちの社会実験によって創造されたのではないか。海賊王国の知湧き心躍る「本当の」歴史をたどり直し、自由、国家、民主主義をめぐる無数の常識をくつがえす。

1968年にフィンランドへ渡り、日本人初のマリメッコ・デザイナーとして活躍した、脇阪克二。フィンランド、ニューヨークを経て60歳を過ぎて京都へ戻るまで、一つのことを長く続けてきた彼が、何を見てどう動き、何を大切にしてきたのか。

霞ヶ関を上り詰めた「働く女性の希望の星」が突如、公文書偽造指示の容疑で逮捕。164日間の勾留のあと、無罪を獲得。 極限状態の中、彼女が決して屈しなかった理由とは。

惠多谷雅弘清水書院

宇宙からの眼で、古代の都市や遺跡、当時の環境を探ることで、時間を越えた世界を見ることが容易になってきた。「宇宙考古学」と呼ばれる地球観測技術で解き明かされた古代エジプト、古代中国の研究成果を、第一線の研究者たちが熱く語り明かす。

泉 徳治岩波書店

現役時代から少数意見を多数表明してきた元最高裁判事の著者が、退官後もその立場を貫き執筆した憲法論文の集大成。司法はなぜここまで立法・行政に対して謙抑的なのか? 日本の司法消極主義を批判し、本来の司法の在り方を問う。

佐々木俊尚かんき出版

ロングトレイルほど求道的ではなく、かといって山頂を目指す登山でもなく、かといって散歩ほどゆるく短い歩行ではない。都会の散歩よりももっと深く濃い自然に浸り、とはいえつらくならない程度に、ただ歩く喜びを満たす旅。「フラット登山」の旅へようこそ!

イヴォナ・コルディンスカ=ナヴロッカ文学通信

ポーランドの国家プロジェクトとして五ヵ年計画で進められている『源氏物語』全巻の翻訳から何がわかってきているのか。その全貌とその翻訳手法・論点を明らかにする。

伊東 豊雄平凡社

話題作を手掛ける世界的建築家・伊東豊雄が、自身の作品をふりかえりながら、現代建築のあり方を自由に思索する最新エッセイ。

古藤 日子筑摩書房

孤立したアリは、なぜ早死にするのか? 分子生物学で、その謎を解く。昆虫が苦手だった筆者がすっかり魅了され、10年以上にわたって見つめてきた、アリの不思議な世界をご紹介。

キャロライン ハーパー柏書房

ビッグバンの後、最初に誕生した恒星を観察するために開発された最新の宇宙望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。この望遠鏡による太陽系、恒星、深宇宙、銀河、系外惑星ブラックホールなどの観測結果から、さらに将来へのミッションまでを観測写真、解説図などとともに展開。

ドン・キホーテのデザイン統括責任者・二宮仁美が、創業以来、初めて明かす店舗デザインの秘密。700以上の店舗デザインを手がけた著者が、「なぜ人々が思わず入店したくなるのか?」かを解説。

大山 祐亮講談社

100の言語をあやつる若き天才学者による、外国語学習の決定書。どんな言語にも使える挫折知らずの外国語独習50のルールを大公開。

高橋 晋平岩波書店

自分の「関心ごと」をテーマにしたボードゲームづくりは、人生をもっとワクワクさせてくれる最高の探究活動です。50種類以上のボードゲームを企画開発、製作してきた著者による「ボードゲームづくりの教科書」。

アンデシュ・ハンセン新潮社

注意力散漫、移り気、そそっかしい……その「弱点」が「能力」になる。なぜ人類にADHD(注意欠如・多動症)という「能力」が残ったのか? 読めば生きづらさが強みに変わる、世界的ベストセラー!

細川瑠璃水声社

西欧絵画の遠近法と異なる中世イコンの「逆遠近法」を解き明かしたことで知られ、美学のみならず神学、化学、工学、集合論・数論における多彩な業績を残すも、スターリン体制下で銃殺されたフロレンスキイ。知られざる「ロシアのレオナルド・ダ・ヴィンチ」の思想に迫る。

2025年3月の新刊ピックアップ

ロバート・マクファーレン筑摩書房

この本は一般的な登山史のように登山家の名前や年号、あるいは山名やその高さを扱うのではなく、感覚や感情や考え方に注目する。いってみれば、この本が扱うのは本来の意味の登山の歴史ではなく、イマジネーションの歴史である。

ジュリアーノ・ダ・エンポリ白水社

本書には、SNSを駆使した選挙で勝利をおさめる「混沌の技師」たちが次々と登場する。彼らこそが、陰謀論をつむぎ、中道を切り崩し、社会の分断を加速させ、極端な政治思想をつなぎ合わせている「ポピュリズム仕掛人」だ。怒りの感情をアルゴリズムで煽り、民主主義をカオスにおとしいれる人びと。その起源から戦略までが、恐いほどわかる。

ユヴァル・ノア・ハラリ河出書房新社

『サピエンス全史』を超える衝撃。知の巨人、6年ぶりの書き下ろし超大作。AIの時代に、ハラリが再び人類史を語りなおす。古代の神話から今日のポピュリズムまで、情報ネットワークがもたらした結束と衝突の歴史。

挿元 おみそ扶桑社

詠んでみたいとは思いつつも、「語彙力がないから」と諦めてしまったたり、「どう詠めばいいのかわからない」と二の足を踏んでしまう……。まったくの誤解なんです! 本書では、きょうから短歌をつくれるようになるためのテクニックをわかりやすくご紹介。短歌とは、たまたま31音になった日記です。

櫻井 武扶桑社

覚醒をつかさどる物質「オレキシン」を発見した睡眠研究の第一人者が解説。本書で紹介する20のTipsは決して特別なことではない。けれどある意味、難しい。現代社会には馴染まないこともあるし、生活習慣にかかわることが多く、意志をもって変えなくてはいけないからだ。

モード編集者歴30年のAmy(エイミー)こと龍淵絵美が、自身の編集者人生を振り返って綴る泣き笑いキャリア物語。日本のモード界を牽引してきたファッションエディターたちの汗と涙の群像劇。

黒田 明伸岩波書店

歴代中国王朝が鋳造した数千億枚に上る銅銭。世界史上極めてユニークなこの小額通貨は、やがて海を越え、日本を含む中世東アジアの政治・経済・社会に大きなインパクトをもたらした。銅銭はなぜ、各国政府の保証なしに商取引の回路を成り立たせてきたのか。貨幣システムの歴史を解明してきた著者が、東アジア貨幣史の謎に迫る。

ロビン・ダンバー青土社

私たちは人とのつながりがなければ生きていけない。進化心理学の視点から縦横無尽に展開される、私たちのつながりの起源。

ルーベン・ファン・ラウク中央公論新社

現代悪魔崇拝の起源を求めて、古代から現在に至るサタニズムの歴史を博捜。さらに、サタニズムに関する事実と虚構の両方を対象にし、かつそれらの相互関係をも解明してゆく。サタンが体現してきたのは「自由」という価値観であり、抑圧への抵抗を象徴するものだったのである。

道林 克禎岩波書店

地球を知る鍵が鮮やかな緑色の岩石にある。マントルの岩石を求めて砂漠を歩き、船酔いに苦しみながら海底から堀り上げた岩石と格闘し、ついには水深9800メートルの海溝の底にまで潜った研究者の見聞記。

井出洋介竹書房

東大を卒業後、プロ雀士として生きた著者の45年間のプロ人生が一冊で分かる本。著者がプロになった時代、麻雀はアングラなものだった。無頼なものが受ける時代だった。だが著者はそれに流されず麻雀をクリーンなゲームとして広めることに尽力した。それにより不遇を味わうことはあってもぶれなかった。

トマ・フィリポンみすず書房

熾烈な価格競争が行なわれるはずの自由市場の国アメリカでは、競争が減少し、一握りの企業への集中が高まったことで、様々な物・サービスの市場で価格が上昇しているという。その背景には企業の政治家へのロビー活動や選挙資金提供で歪められた政策があると著者は喝破する。

梯 久美子文藝春秋

梯久美子が書き下ろす「アンパンマン」の作者・やなせたかしの本格評伝。著者はかつて『詩とメルヘン』編集者として、やなせたかしのもとで働き、晩年まで親交があった。綿密な取材をもとに知られざるエピソードを掘り起こした「やなせたかし」評伝の決定版。

デイヴィッド・ベイカ集英社

20億年前、地球全体が赤道付近も含めて凍結する「スノーボール・アース」現象が起きた。「目からウロコ」の発見に満ちた壮大な性の旅へ誘う。最初のセックスはどのように始まったのか。微生物の時代から現代まで、20億年を旅する知的冒険の書

茂木 友三郎東洋経済新報社

しょうゆを「世界の定番」にした男の仕事論集大成。海外進出には緻密な計算と、弛まぬ努力、そしてより高いところを目指し続ける「挑戦心」があった。この挑戦の先頭に立ち、社や関係者を粘り強い対話とその人間力で巻き込みながら、成功へと導いていったのが、本書の著者、茂木友三郎氏だ。

中野 信子講談社

私たち人間の社会は咒(まじない)でできていると言って過言ではないのです。なぜなら言葉が、意識的と無意識的とにかかわらず人間の行動パターンを大きく変えてしまう力があるから。本書の役割は、脳にかけられた咒がどのようなものかを知らせ、解放することにあります。

デイヴィッド・ホックニー青幻舎

現代の巨匠ホックニーの作品と彼による短い言葉を通じ、見ることと描くことをめぐる、彼の生涯を通じた実験的試みの軌跡を辿っていく。油彩や素描、水彩、版画、写真とさまざまな技法を用いた作品の変遷を紹介するとともに、近年の最新作まで約500点収録。

先端科学のラボラトリーで、社会政策の「実証実験」で、そしてアートの前衛で、人は「実験」の名のもとに、いったい何をしているのだろうか。リービッヒの研究室から、鎌倉の交通実験、ケージの「4分33秒」まで、STSの最新成果をもとに、「実験」という思想/実践の多様な生態系を、科学・社会・芸術の3つの領域を横断して探索する。

2025年2月の新刊ピックアップ

ルル・ミラーサンマーク出版

19世紀末、生涯をかけ魚類を収集・分類した科学者デイヴィッド・スター・ジョーダン。世界に秩序をもたらそうと、まるで運命に抗うかのように分類作業を続ける。全てが混ざり合う、目が離せない知的冒険の記録。

ベン・ブラッドリー法政大学出版局

1970年代の米国史を変えた『ワシントン・ポスト』紙を現場で指揮したのが、映画『大統領の陰謀』や『ペンタゴン・ペーパーズ』でも知られる名編集主幹ブラッドリーだった。この自伝からは、社会の不正や虚偽と闘うアメリカの民主主義の真実が見えてくる。

ラース・チットカみすず書房

ハナバチの認知研究の権威である著者が1匹の内にある驚くべき精神生活を説き明かす。数を数え、道具を使い、ほかのハチやほかの動物から問題解決の方法を盗みさえする。本書を読む前と後で、ハチはもちろん、すべての昆虫への見方が変わらずにはいられない。

山本 栄二/中山 雅司筑摩書房

国連はなぜ戦争を止められず機能不全に陥ったのか。国連日本代表部に勤務した元外交官の経験と、研究者の体系的分析によって国連の実像に迫る、画期的入門書。

ラジ・パテル/ジェイソン・W・ムーア作品社

自然、貨幣、労働、食料、ケア、エネルギー、生命――これらを不当に「安く」してきたのが、人類と資本主義の発展の歴史だった。『肥満と飢餓』『値段と価値』で現代経済の足元に切り込んできたパテルと、「資本新世」を提唱し注目を集めるムーアがタッグを組んだ話題作。

井上 文則講談社

世界がキリスト教化する前、ひときわ勢力を誇ったのがミトラス教である。なぜミトラス教は帝国の数ある信仰のなかで隆盛し、そしてキリスト教に敗れたのか。壮大なスケールで異教にぎやかなりし帝国の姿を描き、ヨーロッパ世界の深層を照らし出す。

「僕のドリブルには抜ける理屈がある」。サッカー日本代表・三笘薫選手がドリブルを中心とした自身の技術と理論を徹底図解。本書を読めば、彼のドリブルは決して速さだけで勝負しているわけではないことがわかります。

レア・イピ勁草書房

LSE政治理論教授がアルバニアでの少女時代から綴る哲学的自伝。自由選挙と市場開放に続く構造改革、移民増加、ねずみ講破綻は、その後激しい暴動に発展する。ある世代の希望は別の世代の幻滅となり、家族の秘密が明らかになる。ふたつの世界を往還する20世紀の成長物語。

世界中に影響を与え、世界を動かした思想家、哲学者、作家、詩人の思索の多くは、歩くことによって生まれてきました。歩くことは、最もクリエイテブな行為なのです。

宮嶋 勲大和書房

グルメガイド『ガンベロ・ロッソ』の覆面調査員が出会った、イタリアの味わい豊かな食と文化の旅エッセイ。

落合 淳思早川書房

原初の文字から太古の社会の神秘を解明する。古代中国で部族固有のシンボルとして使用された特殊な漢字「族徽」。そのありさまを生き生きと写し取ったデザインから当時の社会や文化、世界観の驚くべき実態に迫る。

藏本 龍介NHK出版

ブッダの教えは各時代・地域を生きる人たちによって、常に再解釈される可能性に開かれている。ブッダの教えを再解釈することによって、新たな世界を想像/創造しようとする営みのことを、本書では「仏教経営」と呼ぶ。ブッダの教えは今、どんな「幸せ」を創造できるか? 人類学者が見た、仏教の「現在進行形」。

カルロ・ロヴェッリNHK出版

『時間は存在しない』『世界は「関係」でできている』で常識を覆し、「ホーキングの再来」と評された天才物理学者が、満を持して自身最大のテーマである「ブラックホールとホワイトホール」の謎に挑んだ集大成。

ヤニス・バルファキス/斎藤 幸平/関 美和集英社

グーグルやアップルなどの巨大テック企業が人々を支配する「テクノ封建制」が始まった。彼らはデジタル空間の「領主」となり、「農奴」と化したユーザーから「レント(地代・使用料)」を搾り取るとともに、無償労働をさせて莫大な利益を収奪している。異端の経済学者が社会の大転換を看破した、世界的ベストセラー。

宮崎伸治青春出版社

著者は50歳のとき、ゼロから外国語学習を始めました。そこから現在まで12年間、1日も休まず学習を続け、今では7言語の原書で小説を読むのが趣味。さらにロシア語も勉強中です。なぜそこまで熱中でき、かつ継続できるのか? そもそも「外国語ができる」とはどういうことか?

生態学エコロジー)と経済学(エコノミクス)は、同じ問題を扱う「双子」だ。経済の成長は自然と反目するものでなく、二つは共通の法則に従う。進化論や複雑系理論などの知見を引きつつ、共発展・協力・共生・相互依存など、経済と生態系に共通するメカニズムを探り出す。

文学研究者が出会った、人生に寄り添ってくれる「言葉」と「物語」。自分自身を優しくいたわる「ヒント」がつまったエッセイ集。この世界が、あなたにとって、ちょっとでも生きやすくなりますように。

笠井 亮平文藝春秋

紀元前2~4世紀の古代インド、マウリヤ王朝の宰相カウティリヤが著わしたとされる『実利論(アルタシャーストラ)』。マックス・ウェーバーが「カウティリヤの『実利論』に比べれば、マキャヴェリの『君主論』などたわいのないものである」と評した、冷徹なリアリズムにもとづく国家統治の要諦を論じた幻の書。

山形 浩生星海社

個性的かつわかりやすすぎる訳文に定評のある翻訳者が、圧倒的なアウトプットを生む読書と翻訳の秘密を完全公開。率直すぎて時に物議をかもす訳者解説にこめた思い、アマチュア生存戦略やフィールドワークの面白さ、本業であるコンサルティングの本質まで縦横無尽に論じた。

テイ・キムダイヤモンド社

世界で最も注目されるビッグテックとなったエヌビディア初の本格ノンフィクション。同社がどのような思想のもと、いかにして(テック業界では異例の)長期戦に臨み、勝利を掴んだか? かつての王者インテルの凋落とあわせたストーリーで、「エヌビディア流」の思想やマネジメント手法を明らかにしていく。

宮下芳明日経BP

未知の問題に出合ったとき、「面白そう」と好奇心を持って、ワクワクしながら謎解きや攻略に向かう姿勢。うまくいかなくても、落ち込むどころか「次はどうやって挑もうか」と、むしろ楽しんでしまう冒険者の気持ち。イグ・ノーベル賞を受賞した著者による「問題解決」の力を育てる本。

松下隼士雷鳥社

世界最北のサイエンスの町・ニーオルスン。国立極地研究所の元職員であり、元南極越冬隊員でもあった著者は、観測技術者としてニーオルスンに長期滞在した初めての日本人である。誰もが知っている北極の、誰もが知らない一面を、つぶさに綴った滞在記。